第8章 闇
カカシは、暗部ろ班隊長だ。
本当のことを言えば、花奏の相手をしている場合ではなかった。
この役は、本来ならば、別の人間に、イタチやテンゾウに、任せなければいけなかった。
暗部隊長ならば、ビンゴブックに載る男を追い、とどめを刺し、反逆者を突き止める必要があった。
カカシは、「髪一本たりとも、だれにも、触らせたくない」そう思った。
花奏に、だれかが触れると思うだけで、おぞましい。
想像するだけで、生魚を首すじにつけられたような気持ち悪さがあった。
カカシの行動は、
私情を挟むものであった。
ろ班隊長として、三代目に報告し、
対策を練るのが、先決だったのだ。
だが、カカシは頑として、
首を縦に振らない。
なにがあっても、
いまだけは、
苦しむ花奏の、
そばにいてやりたかった。
例え、それが今まで積み重ねてきたキャリアや、信頼を失うことになろうとも、そばにいてやりたかった。
「……花奏」小さく名を呼んだ。
愛しく、優しい気持ちで。