第29章 始まり
「私の為にも、いっしょに住んで欲しいの。ね?お願い」
目をつむり、パンと手のひらを
合わせて頼んだ。
ドックセラピーなんて名前もある。
犬と暮らすことで心が落ち着いたり、ストレス軽減に繋がるという。
カカシの心の支えに
なるんじゃないかな。
8頭の忍犬が考えているのか、
静かになる。小鳥の鳴声。
柔らかな風が息吹いた。
「ありがと」
肩にカカシの手が回る。
「ま、どうするかは、お前らに任せるよ。無理強いはしないしな。考えておいてくれ」
7頭はパックンを見る。
「オレは、良いぜ」
「ボクも」
吠える声がなり響く。
最後に聞こえたのは
パックンの優しい声色だった。
「……よかろう。そこまで言うならば、お前らの気持ちに甘えよう。子ができれば、ワシらも協力してやろう。自分でやれることはワシらも自分でやる。負担は最小限に留めるよう努力する」
「本当!?ありがとう!」
顔を上げて、パックンの脇下に手を入れて、抱えた。やっぱ軽い。ニコニコして笑った。
「ただし」とパックンが強く発する。
私をジィーーっと見つめる。
身がまう。
次の言葉は何なんのか待った。
「無理ならすぐに言え。ワシらのせいでカカシや花奏が疲労困憊しては元も子もない。よいな?」
「うん。わかった。じゃあ、家が建ったらいっしょに住むこと。よろしくね?」
「うむ」
パックンが了諾すると、7頭は笑顔に変わる。ウルシが「ケケケ!」飛び跳ねる。
「赤ちゃんいつ出来るんだ?」
グリコがにっこり微笑む。
その質問は難しい。ボッと赤くなる私。戸惑うカカシがいて、ふたりで見やり、つい、吹き出した。
柔らかな風がふく。
遠くない未来。
私と、カカシ、8頭が新しく出来た大きな家で、日向ぼっこする姿が簡単にイメージできた。