第29章 始まり
「へーそりゃ良かったな。おめでとう」
オヤツタイムが終了した。
空になった皿。片付ける忍犬たち。
「おめでとうワン」
後ろ脚で頭をかいたり、眠そうに背伸びをしたり、欠伸をするのだ。ブルなんて片目を開けて寝た。
忍犬たちのリアクションがやけに薄い。なんて冷たい連中だろうか。飼い主の顔が見てみた……略。
「小さな頃から散々言われておったろ。いい加減ワシらも飽きるぞ」
パックンが首を鳴らして
後ろ足で頭をかいた。
「え!?そんなことないよ」
「本人同士は気づかないだけで、好き同士なんて、見りゃわかるワン」グリコがにっこり微笑む。
「い、いやいや、そんな事」
焦る私。まったく知らない。カカシと私に、恋の噂があったとは。知らない。
恥ずかしい上、この上ない。
「な、ないよ!ぜったい!だいたいカカシは私なんて」
そこまで言って、天を見上げた。私の頭上に暗い影ができたからだ。
「なに騒いでんの」
デコピンが落ちる。
私のおでこに指が炸裂する。
「あたっ」でこを押さえた。
「言わなかった?オレは昔からお前が好きだよ。気づいてなかっただーけ」
カカシは、「どっこいしょ」と松葉杖を大木の幹に立てかける。私のとなりに腰を下ろして、あぐらをかいて話の中に入った。
「結婚したのよ、オレら。ーーで、いっしょにお前らも住まないか?パックン、他のヤツらも」
カカシの言葉に、ビーフジャーキーを食べる動作が固まる。ポロポロ、口からこぼれ落ちる。
「……カカシ、無理するなワン」
ナルトに似たグリコがつぶやく。
首を振った。
「カカシ、……おぬしは隊長だ。お前が住むアパートに、8頭と花奏が住むには、ちと狭過ぎるぞ」
パックンは小さく作り笑いを浮かべ、
頭も傾げた。
「いっしょにいる方が、ワシらも楽だ。だが、カカシの負担になりたくない」
パックンの大きな瞳が暗く沈まる。何年も離れて暮らしてきた。本当はいっしょにいたい。でも大変なのを忍犬たちは理解している。
「ま、あのアパートじゃあ無理だな」
寂しげな頭を撫でたのは
カカシだった。
「パックン、実は家を新しく建てようと思っているのよ。山の方に」
「……やま?そんな土地あったか?」
頭をかしげるパックンは私を見る。ニコニコと話を聞く私の顔を。