第29章 始まり
「やっぱジャーキーだよ、美味いね」
ニコニコ、マイペースに食べるグルコは額当てをする。よく見れば……頬に3本線が髭模様がある。グルコはナルトくんに似ている。
騒がしい井戸端会議みたいな輪の中に
、私は腰をおろして屈んだ。
「みんな、久しぶりー。身体は大丈夫そうで良かったよ」
ワシャワシャ、いちばん大きなブルの背中をなでた。されるがまま。見た目は恐そうだけど、いちばん心優しい。いつも文句を言わずに触らせてくれる。
パックンとブル以外の忍犬は、オヤツがないと身体を触らせてくれない。誰に似たのか。飼い主を見てみたいものだ。
「んん?おお、花奏ではないか。おぬし、今回の任務で瀕死だったようだな。歩いて大丈夫なのか?」
パックンの口は、八重歯が見えるほど動く。ムシャムシャ美味そうな音が鳴る。ジャーキーの臭いが口から漂う。
「そうだワン、花奏は他人より自分の心配を先にしろワン」とアキノ。サングラスが太陽の光に反射する。
「ケケケ、花奏も食べてもいいぜ?まだ、たらふくあるんだぜ?ケケケ」
口にビーフジャーキーをくわえ、「ホラ食ってイイぜ」ウルシが渡そうとする。
「あはは…ありがとう…遠慮しとくよ」
私が犬用のオヤツを食べたら
変なひとに見られる。
いや、食べないよ?
「元気そうでよかった」
顔色も悪くない。声も出ている。
包帯も外れている。
「花奏、身体は問題ないのか?」
パックンが私に問う。見上げた瞳は心配そうで。
私は優しく
パックンの頭をなでた。
「大丈夫。もう歩けるよ。日常生活も今は問題なくて、あとはリハビリ頑張ったら、また忍に戻れるよ」
「そうか。無理は禁物だぞ」
「うん。わかった。ありがとうね」
立ち上がろうとした私は「あ」と思い出す。にっこり笑顔で口を開いた。
「みんなに報告することがあるの」
私の声は明るい。
忍犬たちが顔を上げる。
「今日カカシと結婚したの。もう婚姻届は出したんだ。凄いでしょう?」
私は、みんなが盛大に驚き、
声をあげると予想していた。