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【NARUTO】柔らかな月を見上げて

第28章 お弁当








「ねえ美味しい?」


サスケくんのアパートに2人で戻った。食卓で早々とお弁当を食べゆくサスケくんに、私は聞いてみた。



「……ふつう」

……こんにゃろう。片眉がぴくりと上がる。そこは美味しいと、おべんちゃらを使うのが賢い言い方なんじゃないのか。お世辞を言え。お世辞を。

ブーブー文句を言いたいが、ぐっと口をつぐんだ。相手は年下の男の子なのだ。

「……はは、まあ、急いで作ったから。今度は気合い入れて作ってみるよ」


なんて言いながら視線を時計に向けた。7時20分。まずい……かな。まあ帰ったらカカシに事情を話せばいい。

外は薄暗くなる。
カタカタと窓が風で揺れた。


サスケくん。そばにいなきゃ食べないって言うのだ。じゃあ、カカシも入れて3人で食べようって提案したけど、それは、もっと嫌だって断られたのだ。

なんでイヤなのかな。
わからないや。





「悪かった。走らせて。怪我してるんだろ?」

下を向いて食べるサスケくん。私を見ないで発した言葉は謝罪だった。

「え!?いや、私が悪いし、サスケくんは悪くないよ」

逆に走れると分かってよかったよ。多少無理しても悪化しないことがわかった。


……たぶん。イタチのチャクラによる治療が功を奏したのかもしれない。腹を貫通する致命傷だった。それなのに、早期に走れるほどまで回復しているのだから。

目の前にいる少年を
私は見つめた。


「サスケくん……お花、ありがとうね。凄く嬉しかったよ。そう言えば、帰ってから話すって言ってたこと、教えてくれる?」

夜、出発の前日。なにを伝えたかったのか、知りたかった。私が問うと、サスケくんは肩を揺らして咳をした。

「え、ちょっと、大丈夫?ほら、お茶飲んで」

渡したお茶を一気に流し込むと、
私に綺麗な瞳を向けた。

「……大人になってから言う」

「え」

「20歳になったら」

え!?何年後だ。
……13年経ったら私は33歳だぞ。

33歳の私はなにをしてるかな。
自分のしたいことを出来ているだろうか。


「サスケくん、なんでも話してね。あなたに大切な人ができたら、今度はその人を守ってあげて」

きっと命をかけても守りたい人が必ず現れるから。

私はサスケくんの食べる姿に微笑んで、
そう言った。

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