• テキストサイズ

【NARUTO】柔らかな月を見上げて

第27章 退院後


「うん。そうだね。でも、
ごめんね……ありがとう」

木ノ葉の額当てが、
カカシの左目を隠す。


神無毘橋の戦いで左目を負傷した。
帰還後、リンが行った応急処置以外、
カカシは処置を拒んだ。

ミナト先生や仲間や医療班がいくら話しても、耳を貸さなかった。

カカシは泣いて。泣いて。
泣き続けて。

自分をとがめる為に
許さないために。
忘れないために。

敵に斬られた傷をあえて
残したのだ。

真っ直ぐに縦に伸びる傷痕は
いまも深く刻まれる。

私を庇った背中の傷痕は
いつかは薄く目立たなくなる。

消えてゆくのに。

カカシの左目を刻んだ傷だけは
いつまでも消えない。

友人のリンの心臓をえぐった手の感触は
これからもカカシのなかで残り続ける。

深い傷を負ったまま。
心に刃が残ったまま。
時が止まったまま。
後悔の渦に苦しんだまま。

いつまでも
カカシのなかに残り続ける。



「カカシ……あのね」

私は
黙ったままの
石碑の名前を見つめながら
口をひらいた。

木ノ葉にすべてを捧げた
父の名を見つめながら。

最後の最後まで、死ぬ瞬間まで
懸命に生きた父の名前に
背中を押されながら。

「あのね」

私は言葉を発した。


「いつか……いつかでいいの。自分を、時間がかかってもいいの。昔の自分を許してあげて」


私は慰霊碑から目を
そらさなかった。


「……ずっと背負うことだって、わかってるよ。でも……許してあげて欲しいの。昔のじぶんを」


後悔の海で苦しむカカシを
救えるのは、私じゃない。


背中を押せても
最後の最後に決めるのは
私じゃないんだよ。



自分なんだよ。


自分だけが
自分を救えるんだよ。


自分だけが
自分を許せるんだよ。

自分だけが
前に進めるんだよ。


カカシだけが
カカシを救えるんだよ。


/ 561ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp