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【NARUTO】柔らかな月を見上げて

第27章 退院後


「んーじゃあ、次いくか」

松葉杖をついて、
カカシが前を歩いてゆく。

その背中を私は追いかけ、地に咲く草花が風で揺れ動いた。



ひときわ大きな慰霊碑が
真ん中に建立する。

数えきれないほどの名前が
石碑に連なる。

そこには

任務中に戦死したリン。
大戦で死去した私の父。
任務で殉職した仲間。

たくさんの馴染みある名前が
溢れる。

カカシと私は、慰霊碑の前に
そっと仏花をたむけた。

サスケ君から貰った
綺麗な赤いポセンチアの花や
ガーベラの花を数本もらって
一緒にそなえた。

鮮やかな花びらが
風でそよぐ。

慰霊碑は
沢山の参拝者が訪れる。

私達の花束が
明日には、どれか
分からなくなる。


それほど多くの参拝者が
慰霊碑前に
たくさんの花をたむける。


となりに並ぶカカシに
明るさが消えゆくことを
私はわかっていた。

その背中を
何年も見てきた。

何年も。何年も。

合掌したあとも、
刻む名前を見つめたまま
カカシはたたずむ。



「カカシ……」

くしゃりと音が鳴る。
花束を巻いたビニールの音が。

サスケ君から貰った花束を持つ手に
どうしても、力が入った。


「同じ過ちを
繰り返してはならない」

カカシは自分を
戒め続ける。

一生、罪を背負い続ける。
一生、後悔のなかで彼は生きていく。

一生、拭い去れない悲しみを
持ち続ける。


「……背中の傷痕ね、目立たなくなるんだってね、よかったね」


私を雪ノ里の戦いで庇った傷痕は、薄く残る程度に回復すると、医師が話していた。


「もう気にすんなって言ったでしょ。この話は終わり。な?」

となりに並ぶカカシは
松葉杖のまま、
慰霊碑を見つめたままで。

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