第27章 退院後
「父さんに負けないよう、これからも精進して参ります。花奏といっしょに生きていきます……」
カカシはそう言うと
そのまま黙って
墓石を見つめ続けた。
自分の父親の第一発見者は
カカシだ。
涙目のカカシを
いまでも私は覚えている。
私の父は、
サクモさんに感謝していた。
私を助けてくれた
ことをよく私に話した。
一字一句
覚えてしまうほどだ。
危険をかえりみず。見ず知らずの人間を。たまたま通りかかっただけで、崩壊しかけた瓦礫の中へ助けに行く行為は、そう簡単にできない。
並大抵のことじゃない。
頭では、だれもがわかっていても、考えても、とっさに行動をうつすことは、なかなかできない。
それを
サクモさんは
やってのけたんだよ。
普通のひとは、どんなひとでも
必ず、一瞬でも迷いが出る。
サクモさんは
一目散に私を助けに
飛び込んだ。
崩壊した瓦礫な中から、
私を抱えて戻るサクモさんを見た瞬間、父は、涙が止まらなかったそうだ。
自分の命よりも、大切な子どもを助けてくれたサクモさんをどれほど感謝しても足りなかった。
どれほどの気持ちを伝えても、
言葉では言い尽くせない。
ありがとうの言葉では足りない。
感謝しかなかったよ。
サクモさんは
素晴らしいひとだよ。
立派なひとだよ。
そう話した。
私の父は、いつまでも
サクモさんに感謝の気持ちを
忘れなかった。
涙を滝のように流して
「ありがとうございました」と
繰り返し伝えていた。
「サクモさん、カカシのお母さん、私、カカシのお嫁さんになります。どうぞよろしくお願いします」
私が微笑んで伝えた。
「花奏、よろしくな」
カカシはそう言うと、私の肩を撫でて
優しく笑った。