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【NARUTO】柔らかな月を見上げて

第27章 退院後


「……ただいま」

松葉杖を地の石段に置いたカカシは、墓石の前に立ち、静かに合掌した。
私も並んで目を閉じて手を合わせた。

それから
わたし達は墓の掃除を始めた。

カカシは水桶から柄杓で水をすくう。竿石のてっぺんから濡らして、すみに置かれたスポンジで、墓石の汚れをこすった。

私も屈んで、
墓周りの小さな雑草を
ぶちぶちと抜いた。

ビニール袋に
抜いた雑草や、拾ったゴミ、しおれた仏花を入れると、さっぱりと綺麗になる。


次に両端の花立に
新しい仏花を入れて水を注いだ。

コップをスポンジで洗って
柄杓で新しい水をいれた。

私たちは、とても慣れた手つきで
手際がよい。無駄がない。

幼少期から10年以上
同じことを繰り返しているからだ。

何年も何年も
親の作業する背中を
焼きつけるほど眺めてきた。

何十回も
この場所を訪れている。

どの墓がどこにあるのか
暗記して言えるほどだ。


道なんて
目隠しでも墓まで歩ける。
それほど
よく覚えているのだ。

身体に染みついているのだ。

カカシは、
マッチ箱からマッチ棒を取り出して火を灯す。そのまま線香に火をつけた。


「花奏ありがと。助かったよ」

火が大きくなる前に、
すかさず火を消すと、細白い煙がのぼる。

カカシはそのまま
香炉に線香を置いた。

先端がじりじりと赤く熱を保ち細い煙があがり、白い灰ができてゆく。

たちまち、線香の香りが墓場を包んだ。ろうそくにも、カカシが火をつけると、ゆらゆらと火が動いた。

「無事に生還できました」


静かに
両手を合わせて
瞳を閉じた。

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