第6章 アジトへ
大男から私は離れて、少し距離を置いた次の瞬間、突如、ガクッと全身の力が抜け落ちる。
「……っ!?」
何が自分に起こったのか、分からない。その場で、両膝と掌を床につけてしまい、全身から滴る汗を流して、揺れる地面を見ていた。
頭痛や停滞感は先程からずっとあった。
だけど何か違う。何かが違う。
身体に異変が起きた事は、すぐに理解は出来る。
風邪が悪化した……?
とにかく、体勢を整えようと体や腰、膝、腕などに力が入れようとするのに、出来ない。上手く力が入らない。身体を動かせないで、ただ下を向いたまま。
私の異変に気付いたイタチとテンゾウ、カカシがこちらを振り向き、私の名を呼ぶ。
声が出せないほど息上がる私は、顔も上げる事も、手を上げる事すら出来ない。反応する余裕が一切なかった。
違う……、
これはもしかして
風邪なんかじゃ…………
ドクン……ドクン……
一気に自分の、心臓の鼓動が早くなってゆく。
さらに下半身の違和感に気づいた私は、堪らずに顔を赤くする。
…………!?
まさか…………そんな、信じられない……!!
でも今の症状をプラスした瞬間、
それしかないと、確信へと変わる。
あるモノを、イメージした瞬間、私は顔を面の中で強烈に歪ませ、恐怖と困惑の嵐に見舞われた。
なぜ……なぜ?……
どうして!?
どこで!?
誰に!?
「花奏!?どうした!大丈夫か!?」
「…………カカシ…………」
カカシが咄嗟に私の方へ駆け寄ってくれて、肩を触る。触られた場所が、強く激しい熱を持って全身を鋭敏に伝えた。
ドクン……ドクン……
嫌だ。嫌だ……
大丈夫だよ、問題無いよ。と言ってカカシの手を離したい。誰にも気づかれたくない、バレたくない。触られたくない。
だけど今、真逆の感情しか湧き上がらない。
それが最後の決定打となった。
やっぱりあの時、言えば良かった……
異変を伝えていれば……。
後悔ばかりが頭を巡る。
カカシが私に触れた直後、
やっと身体に何が起こったか、
把握して理解した。
ああ、私は…………。
盛られたらしい。
強力な毒を……。