第5章 出発
阿吽の門の前で待つ3人へ声を出しながら駆け寄る。
「ごめん!すぐ行こう!」
顔の前に手を出して皆に詫びた。イタチは、私を見てほんのり目を薄めて、小さく笑ってくれた。
「大丈夫です、花奏さん。ですが急ぎましょう、奴等の匂いが消えてしまう」
犬面を被り、丸い穴の中で、写輪眼を発動させ、瞳が紅く変わる。
「ま、多少遅れても、大丈夫だろう。先に追跡してる奴が、木に目印を付けてくれているはずだ。とその前にーー」
声を出しながら親指を噛み切り、素早く印を結ぶ。手のひらを地面に押し当て小さく叫ぶ。
口寄せの術‼︎
発動する術音と煙りが舞い上がり、中からパグ犬のパックンが出てきて、カカシの肩に軽々と飛び乗った。
パックンは周りを見渡し渋面を作る「カカシ、任務か」
「連チャンで悪い。この臭いを覚えて、行方を追って欲しい。盗賊が残した布切れだ」
千切れた服の一部をパックンの鼻付近に持っていき、嗅がせた。
ぴくっと嗅ぐ動きを止め、カカシの顔を見上げる。
「10人以上だ。ワシは1人嗅いだ記憶があるぞ。昔よく嗅いだ男だ」
「ああ、ビンゴブックに載ってる男だ。走りながら話す。行くぞ!」
瞬身を使い、阿吽の門を後にした。
私が地面を足でとんと跳んだ際、
小さな異変が身体に巡り、顔を瞬時に強張らせていた。