第19章 記憶
「……お前、なに泣いてんの?」
頭の上でカカシの低い声が響く。余計に私はうつむく。
「……泣いてない」
「あーーー、もう!」
カカシはすぐに私の前でしゃがんだ。そのまま私の背中と膝の下に手を入れて、一気に身体を持ち上げた。
「っ!ちょっ…と!」
いきなり抱き上げられ、私はカカシの肩から首の後ろを慌てて掴んだ。毛布ごとカカシは包んで抱いている。
「やっぱいっしょに行く」
「カカシ、私、自分で帰れるよ…大丈夫だよ」
「……花奏、オレの目を見なよ」
カカシが瞳をまっすぐに合わせて
真剣な表情で私を見つめる。
「お前は謝らなくていい。小さいとき、イタチが好きだったんでしょ?それでいいじゃない。でも今は気持ちを切り替えてよ。な?」
カカシがそう優しく言うのに、
たちまち自分の頬に
涙がつたう。
子どものように
ぽろぽろと溢れた。
「ごめん。わかってるよ。…お願いだから見ないで…」
唇や頬の涙を手でぬぐった。
なんで泣くんだろう。
「…もう泣くなよ。あのね、さっきオレがため息ついたのは、自分が情けなくて出たのよ」
「え…?…なんで?」
涙目で聞くと、カカシは
さらに、大きなため息をついた。
「はあ……あのね、オレは思いっきり、イタチを取り逃してるでしょ。もう最悪じゃない。ほら行くよ、掴まって」
カカシは足にチャクラを溜めて一気に街の屋根を飛ぶ。街を嵐のように駆け抜けた。
走ってるときに、
私の顔を横目で視線を送った。
「お前…顔とか手とか、けっこう怪我してるね。なにやってんのよ。ぜんぶ終わったら病院行こうな」
「うん、ごめんね…ありがとう」
「ちゃんと掴まってろよ、急ぐから」
カカシは私を抱く力を強めて、
一気にスピードを上げた。