第19章 記憶
「今すぐ応援を呼んで暗部全員でイタチを追え。オレは3代目に報告してから応援に行くから」
「ハイ!」
テンゾウは瞬時に暗部本部へ向かう。カカシが私の方にすぐさま近づく。写輪眼を灯したままで。
「大丈夫か、花奏」
私の瞳や身体をまんべんなく見た。
幻術をかけられていないか、
チャクラをチェックしているのだ。
「問題ないな」
「うん。カカシ大丈夫だよ。ごめんなさい。……私…なにも知らなくて……普通にイタチは任務だと思ってたの。だから…」
「わかってる、今はぜんぶ後回しだ。3代目へ報告に行く。立ちなよ」
カカシに促されても、私は素直に立てない。毛布やコートに包まれる中は裸なのだ。しかも外だ。
「いま素ッ裸でさ……。だから家で着替えて行くね。鍵を貸してくれる?」
カカシを見れない。ただ、自分にかけられた毛布を見ていた。身体が小刻みに震える。自分の姿がとにかく恥ずかしかった。
「ああ、使いなよ。ほら」
カカシはポケットから鍵を取り出すと、
私の手のひらに置いた。
鍵を受け取ったとき、
はっきりと耳に聞こえた。
カカシの深いため息を。
呆れた……?
「…ご、ごめん…カカシ、急がなきゃダメだよね?だから……もう先に行ってて…」
私の視界はじんわり滲んだ。
泣いてる姿を絶対に見せたくない。
それなのに声は湿った。
「……ごめんね」
自分が
いちばん分かってる。
イタチを
私は敵と見れない。
私を大事にしてくれた
イタチを、
敵になったとき、
戦えるの?
"花奏さん…"
彼の微笑んだ顔が
頭に残っているのだ。
暗部として
忍として
いま、
私に緊張感が足りない。
なんて……
自分は
甘ったるい人間なんだろう。
呆れる。