第19章 記憶
「花奏から離れろ」
低い声が遠くで響いた瞬間だった。
鋭利なものが飛び、ぶつかる音がした。
イタチが背中を向けたまま、長刀で跳ね返したのだ。
阿吽の門壁を深く抉ったのは、
鋭く光るクナイだった。
イタチを迷うことなく
完全に狙った。
怒りに満ちた声が迫ってくる。
「お前さー、こんなところでなにしてんの?返答次第ではタダじゃおかないからな。ま、イタチ……」
睨んだ左目は紅く殺意を放つ。
静かにこちらを歩いてくる低い声は、
怒りで震える。
「とりあえず1発殴らせろよ。腹がたって仕方ないからな」
バチバチと火花が散り、任務から帰ってきたカカシの手に青い雷光がまとう。
「カカシ…あのね待って待って! イタチは怪我をしてて、私は今戻ったところで、だから……だからね…」
やめてよ!!
ちゃんと言えない。カカシが恐い。
私がなにを話しても、イタチに鋭い眼差しを向けたまま。私の身体は強張り萎縮してしまう。
「花奏は黙ってろ。それだけじゃないんだよ。オレが怒ってるのは」
カカシはイタチから視線を逸らさない。
「えッ……」私は口をつぐんだ。