第18章 うちは一族として
「花奏さんは、相変わらず無茶をしますね」
「イッ!」消毒液がしみたのか、小さな顔を歪ませた。涙目で「イヤイヤ」言う花奏は、ぎゅっとイタチの任服を小さな指で掴んだ。
イタチはできる範囲で手当てをしてあげた。
いちばん痛そうな、ずりむけた膝に消毒液をつけて絆創膏を貼ったが、どうも数が足りない。
全身に貼らなきゃいけないぐらい、花奏の身体は、すり傷まみれだ。
顔にも絆創膏を貼ったが、
見た目は悪ガキの大将みたいで。
「サスケも昔からやんちゃで…。怪我をすれば、おんぶして家に帰ったんですよ」
最後に、木の葉隠れ里病院に運んだときも、おんぶをしてあげた。それはサスケとの最後の触れ合いだった。
「イチャ、イチャ」と手を伸ばして抱っこをせがむ花奏。脇の下に手を入れてコートに包ませて抱き上げた。
「軽症で良かった。万が一、気付かないで里を出れば、オレは後悔していましたよ?気をつけてください」
柔らかで小さな、愛おしい頬を触った。冷たいほっぺが、ほんの少しあたたかくなって、イタチに触られて、クスクスと笑っている。
なんて
愛おしいんだろうか。
イタチは優しげな瞳で見つめた。
瞬身の術を使ってここまで来たならば、身体をもとに戻れるのではないか。そんなことを先ほどから考えていた。
仮に戻せたら……?
いっしょに……
行けるのではないか……。
行けなくとも、
触れることはできるのではないか……?
「花奏さん、オレを見てくれ…」
丸くまつ毛が長い大きな瞳を見つめ、イタチは万華鏡写輪眼を発動させた。一ミリの可能性にかけたのだ。
「イヤ…!」
なにをされるのかわからない。花奏は首をブンブンと左右に振った。
「恐がらないで、お腹にチャクラを集めて解と言うんだ」
「イチャ……」不安な瞳に涙が浮かんだ。
何時間、何十時間…繰り返しても、
現実は一瞬。
身体が大きくなり喋れるようになり、チャクラを練れるようにもなったように、幻術をかけた。
「解」と言うんだ。
何回、花奏の耳に
届いただろうか。
小さな口をぱくぱく開いた。
「か……」
お腹に温かいお湯が集まる感覚。
「……かぃ」
ポンッと小さな音が阿吽の門で鳴った。