第18章 うちは一族として
イタチは2階の窓を開ける。
大きな満月は薄く黄金に輝き、優しく頬を照らす。夜空は澄み渡り、イタチの月影がくっきりと壁に映れた。
用意した靴を履き、踵を鳴らす。
木ノ葉隠れ里の「忍」を示す額当てを
頭にきつく縛った。
すべては
任務を遂行するために。
すべては
里の平和のために。
すべては
うちはサスケを。
ーー弟を守るために。
イタチは静かに屋根をつたい、目的地を目指した。向かうは警務部隊が集まる場。
石段を登ると、百人以上もの警務部隊が神社で集う。手にはクナイや刀を持つ。
フガクは無血開城を望んだ。しかし反抗心を持つ忍に対しては、力で従わせるつもりだ。
火影にもっとも近い暗部の人間が、おめおめと黙っているわけがない。
確実に殺し合いになる。
だが、死者を出そうとも、
目的のためならば致し方ない。
それが、警務部隊の総意であった。
イタチは気配を消さずに、山道を歩き鳥居をくぐる。集団の輪を目指した。
本殿前に集まる警務部隊は、
怪訝な表情で振り返った。
「イタチ……か??なぜお前がここにいる。フガク隊長と打ち合わせ後、アカデミーを2人で攻め入る予定だろうが」
警務部隊は苛立ちを隠せない。
なにも喋らずに黙って
こちらを向かってくるのだ。
イタチは背中の長刃に手をかけた。
ここは神を祀る神聖な場だ。
己の手を見た。
これから血塗れになる己の手を。
ーーこの場を借りる。
ーーすまない。
警務部隊に嫌な緊張が走る。
手に刃を持つイタチは殺気を放つ。
「……アイツ…、
オレらをやる気なんじゃないのか?」
小さな呟きは、ほかの警務部隊の不安を誘う。警務部隊のリーダーを任されていた男が大きく叫んだ。
「おい、イタチ!!すぐに戻れ!!?お前は、うちは一族に歯向かう気か!!?」
イタチに近づき肩を強く押した。
怯んだときだ。