第18章 うちは一族として
ゆらゆらと火が揺れる。
ろうそくをぼんやりと眺めていた。
花奏の寝息がきこえる。
それは、嵐の前の、
優しい時間だった。
イタチの頬に滴が伝う。
「シスイ……なんでだ……、なんで…………。オレは……オレは……」
ポタポタ……
涙が花奏の頬に当たった。
拳を強く握った。
時間が戻れるならば戻したい。
幾度も願った。
「……っ、」
イタチは、すぐに気づいて、手のひらで頬を拭った。
花奏の頬についた涙をそっとふいた。やわらかな肌が気持ちいい。あたたかで小さな背中が呼吸に合わせて揺れる。
小さな指はイタチの袖を掴んだまま。
お人形を離さないで眠る子どもみたいだった。
イタチは口もとを緩めて、花奏の頭を撫でた。
「花奏さん……、あなたがオレは大事だ。せめて、身体が大きくなるまで守るつもりだったんです。すまない……」
言えない悲しみがこみ上げる。
届かなかった願い。
寝室ではサスケが眠る。
「サスケを、どうか助けてやって欲しい。アイツはいつも強がって本音を見せない。ひとりでも大丈夫だと言うだろう。……だからたまにで良い。見守ってやって欲しい。オレはもう出来ないから……」
出来ない。もう……。
苦しい思いが溢れた。
「あなたなら、花奏さんなら、サスケは気を許すかもしれない。オレと同じように……」
柔らかな髪を手で撫でた。茶毛でクセのある可愛い髪を優しく指ですくう。
「さよならを言いたかったです……あなたに、最後に……」
イタチは窓を見た。少し欠けた月がぼんやりと、優しく浮かんでいた。