第18章 うちは一族として
夜になると、気温は下がりいっそう冷えた。
イタチは、通夜でろうそくや線香の火を見守った。火がゆらゆらと揺れる。
遺影は中央で、周りには多くの菊の花が飾られた。遺影に映るシスイが、どこか寂しそうに見えた。
「サスケ、もう遅いぞ、11時だ。隣の部屋で寝るんだ。明日も葬式がある」
隣の席で座るサスケに、イタチは休憩室で眠るように促し、優しく肩を叩いた。すでに限界に近いのか、サスケの瞳は半分も開かない。
「う、うん……。でも、オレ、兄さんの隣にいたいんだ。大丈夫だよ、1日ぐらい。頑張れるって」
うとうと、頭がかくんと崩れる
たびに、目を擦って顔を上げた。
「兄さん、だれもいないね……」
サスケは周りを見渡した。本当にいないのだ。普通なら親族や家族がいるはずなのに。
シスイの両親は大戦で他界した。シスイにとって、イタチだけが頼れる人間で、関係は兄弟みたいだった。
シスイは昔から戦争を嫌った。両親を戦争で亡くしたからこそ、他の人間に同じ苦しみを味わって欲しくない。だからクーデターを常に反対していた。
もし生きていれば。もし……。
イタチはこみ上げる涙を抑えた。
となりにサスケがいる。
兄が泣くわけにいかない。
「サスケ、じゃあ1時間だけ寝ろ。あとで起こしに行くから」
「兄さん、オレは大丈夫だから。子どもじゃないよ。そっちの、花奏の方は良いのかよ、完全に寝落ちしてるじゃん」
半眼で「不公平だ」と反対側に視線を送った。イタチの腕を掴んで、むにゃむにゃ言って眠る小さな花奏。肩には毛布がかかる。
「花奏ちゃんは、影分身じゃ泣くからな。オレじゃないとダメらしい」
「ふーーん」
サスケは、不機嫌に返事した。花奏の背中に置かれた兄の手が羨ましかった。
「分かったよ。起こしにきてよ?ぜったいだからね?」
口を尖らせ立ち上がるサスケ。となりの休憩室へ向かった。
「サスケ、おやすみ」
優しい声で微笑した。
「うん、おやすみ」
ニッと笑みを浮かべ、パタンとドアを閉めた。すぐに無音の時間が広がる。線香の香りが、閉まる風に乗って飛んだ。