第18章 うちは一族として
アカデミーの長い廊下を歩けば、銀髪の長身の忍がいた。
馴染みある狐のお面を頭につけ、壁にもたれ掛かる。
だれかを
待っているようだった。
イタチの姿を見つけると、手を上げて暗部の忍たちは駆け寄った。
「えらく長い話だったな。緊急か?」
発せられた声は、イタチを気遣う優しい声だった。カカシに問われたイタチは普段よりも小さな声で
「……はい」と喋った。
目の前にいる、暗部ろ班隊長のカカシは、これから任務に向かうのだろう。暗部の装具は万全な状態だ。
カカシの背中後ろには、猫のお面をつけたテンゾウも待機していた。
「そうか。オレも3代目と話をしたかったが、また今度にするよ。 イタチ、すまない。シスイの式に出れずに」
詫びを述べたカカシに、イタチは小さく首を振った。殉死や亡くなった場合、親族以外、式に出れる人数は限られている。ましてや暗部は激務で常に人手不足。
大戦中は、片手の人数も集まらずに、葬式を済ませることが多かった。
「いや……気にしないでくれ」
一瞬、カカシから視線を逸らした。目の前にいる上司のカカシが、あまりに眩しく見える。窓からの日差しが強く当たっていた。
イタチは思う。
カカシに頼れたらどれだけ楽か。
どれだけ……。
イタチはカカシに再度、目を向けた。
「花奏さんとサスケが森で待っている。カカシさん、じゃあ失礼します」
先を急ごうとすれば、カカシは腕を掴んで行先を引き止めた。
「ああ、イタチ。オレら任務だから。明々後日の朝ぐらいに帰るから。花奏を頼むな」
カカシはお面をかぶり、テンゾウへ合図を送る。
「じゃ、よろしく。行くよテンゾウ」
「ハイ!カカシ先輩」
瞬身の術を使い、2人は消えるように任務に向かった。
カカシとテンゾウがいた場所を、イタチは遠くを眺めるように、黙って見つめる。純粋に羨む気持ちが溢れていた。