第17章 答え
「傲慢なことを!」
フガクは息子の言葉に、思わず耳を疑う。なんてことを。代々うちは一族を敬う心を汚す暴言に激昂した。
「もう良い、イタチを拘束しろ!」
フガクは怒りに叫ぶ。
「ぁ"ぁぁーんっ、うぇっうぇッ……」
玄関口で赤子の泣く声が大きくなる。涙を幾度もぬぐい、目が真っ赤だ。
大きな声や空気を恐がる花奏はサスケの服をぎゅっと掴んだ。
サスケは涙目で、
兄であるイタチを見つめる。
こんな兄さんを……見たくない。
こんな家族、オレは見たくない!
「に、兄さん!! もう、やめてよ!どうしたんだよ、いったい!」
悲痛に大声で叫んだサスケは、イタチを見つめる。もう終わってくれ。頼むから、お願いだから、もうやめてくれ……!!
イタチは……玄関口の2人を見た。
泣きじゃくる声が耳に届く。
ガツンと殴られたように、心が痛んだ。
「…………っ、……」
…………すまない。
オレは……。
サスケ……花奏さん……
心で何度も謝った。
醜い姿をみせて……
本当にすまない……
最後だ。
兄らしい姿を。
イタチは、静かに地面に膝をついた。
そして両手を床につけ、頭を下げる。
「……シスイを殺したのはオレじゃない……数々の失言を謝ります。申し訳ありません」
頭を下げるイタチは続ける。
「あの子は……花奏…ちゃんは、なにも出来ない小さな子どもだ。うちは一族を脅かす存在ではない。ほんの短い間だけ……助けてやって欲しい。せめて…今日一日だけでも……」
そう頭を深く下げるイタチに、フガクや警務部隊は面食らう。敵に見せるような鋭い殺気は消え失せ、もとの漆黒の瞳に戻っていた。
フガクは黙ってイタチを見つめる。
そして息をはいた。
「……分かった。最近、赤子の世話や任務に休みがなかったからな。少し……疲れていたようだ」
苦渋の上、腕組みしたフガクは
慎重に言葉を並べる。
「イタチは暗部だ。直轄部隊だからな。捕捉状がなければ対処が出来ない」
「しかし、隊長!!」
「フガク隊長! そんな、アイツは俺の腕を切り落とすとまで脅したんですよ!!?」
警務部隊は納得しない。
あの赤子が何かを掴んでいる。
いや、イタチも……。
疑いの目で、イタチを見下ろした。