第17章 答え
母上はいま買い物に出かけている。父上も。どちらかと言えば安堵した。邪魔は今いないのだから。
「ぅぅ……、ぁう、ヤ……」
花奏は小さな声を出した。
いつもはもっと大きな声なのに。1階にいる人たちの空気が恐いのだ。
「……すぐ、済みます」
イタチは小さな頭を優しく撫でて、
廊下をゆっくりと歩いた。
どうすれば、穏便に済ませれるか
考えていた。
まあ……無理か。
階段下ると、すでに警務部隊のメンバーが玄関を開けて仁王立ちで待っている。
「皆さま、どうしましたか、お揃いで……」
わざとらしいか……。
とイタチは自嘲する。
早朝からずっと追跡されていた。
ただ、動向を見極める為、わざと知らない振りをしていた。
「……なんでガキを抱いている?大した話ではないと思っているのか?相変わらず舐めた野郎だ」
隠さないで殺気を放つ。
イタチは仲間のはずなのに。
敵意むき出しの警務部隊に睨まれた花奏は、ぎゅっとイタチに強く抱きつき、顔を背けた。張り詰めた空気が玄関で漂う。
「……怯えている。やめて欲しい」
イタチは淡々と伝えた。
「なあ、イタチ。昨夜の案だが、良い案だと思わないか?身寄りのないガキだ。このガキも役に立てて光栄だろう」
そう言ってせせら嗤う警務部隊。
イタチは何も言わずに黙っていた。
これは、明らかな挑発だからだ。
怒らせるために、ワザと言っている。
昨夜、「クーデターの為に、身寄りのない赤子を使え」と暴言を吐いたばかり。
いま、挑発に乗ってはいけない。
静かに中心的存在の男に目をやった。
「……ご要件は何でしょうか?」
朝からコソコソと追跡されて、
目障りであった。
「……深夜だろう。シスイが南架ノ川で身投げした。今朝方発見された。イタチ、仲が良かったな。何か知らないか?」
警務部隊の1人が遺書を渡した。シスイの執筆だ。
「……いえ、……残念ですが……」
イタチはそれ以上伝えなかった。ダンゾウが目を奪ったと分かれば、クーデターがさらに激化してしまう。
「イタチ、警務部隊は捜査に乗り出す。暗部にも捜査協力を要請しろ」
「……了解しました」