第17章 答え
「イタチはいるか!出てこい!」
「っ!?」
唐突だった。
家中に響く怒鳴り声。
それは、イタチとサスケ、そしてイタチに抱かれた花奏が家に帰り、ちょうど荷物を置いたときだ。
地鳴りのように大きな男性の声が、家中に響いたのだ。
突然な来訪者。そして怒鳴り声。
あまりの不穏な空気に、1歳ほどに成長した花奏は、瞬時に身体をビクつかせる。赤子にとって、大きな音というのは、恐怖でしかない。
「ふ、ふぇ……ぅぅ」
すぐそばにいたイタチの服の袖をぎゅっと強く掴んだ。怯えた顔でドアの方を向ける。今にも泣きそうな顔で、目尻には涙を浮かべていた。
「……花奏…ちゃん、だいじょうぶ、よしよし」
とイタチが頭を撫でても、不安は膨らむ。イヤイヤと顔を振る。ぎゅっとイタチの足に、花奏は震える小さな手を回した。
となりに座っていた7歳のサスケも不安になる。
聞こえた声は、普段よく耳にする警務部隊の人たちの声。いつもサスケに気さくに話しかけてくれる人たちだが、今日は声から違った。
「……に、兄さん……呼んでるよ……?」
サスケは怯えた声で、イタチに視線を送った。どう対応すればいいのか分からないのだ。
「ああ、……少し話してくる。サスケは、ここにいろ」
出来るだけ優しく……そう思うのに、まったく出来ていない。声が張り詰める。親友が亡くなったのが、昨夜……。心の処理が出来ていないのだ。
落ち着け。落ち着け。落ち着け。
深く息を吸い込み、大きく吐いた。
「ふぇ、ふぇ……」
今にも泣きそうな赤子はイヤイヤと足に絡まる。
イタチは足から離れない花奏を優しく抱っこした。
「なーに、泣いてんですか?ほら、笑ってください」
抱っこして、小さな背中をトントンと叩き、ドアを開けた。
サスケに目を向けた。
出来るだけ、笑顔で。
「サスケ、だいじょうぶだ、心配するな」
にこりとイタチは苦々しく笑った。
「で、でも……」
そんなことを言われても
心配だよ。
そう、サスケが続けて言おうとしたけれど、さらに大きな声が幾度も1階から響く。
サスケは口をつぐんだ。
嫌気が出る。ため息をついたイタチは、小さな弟に見送られながら、ドアを閉めた。