第17章 答え
「この子に……指一本でも触れてみろ。オレは容赦しない」
睨んだ瞳は紅く染まる。
「イタチ!止めろ!」
臨戦体制になる息子に、
フガクも驚きを隠せない。
イタチがここまで感情的になる姿は初めてだ。
仲間を見る目ではない。ここで殺し合いを始めてしまいそうな瞳だ。
「…………」
……ここまで堕ちたか。
イタチは目を閉じて写輪眼を解いた。
時間の無駄だ。
「……帰ろう、花奏ちゃん」
固まるシスイから、怯えて泣き出しそうな赤子を抱き上げた。
「すまない……」
背中を撫でて
そのまま踵を返して、集会所を後にした。
背中からイタチを中傷する声が聞こえる。フガクは言葉を失いイタチを見送った。
精鋭部隊の怒号がイタチを責める。振り返らずに反論もしない。もう……諦めているのだ。足を止めないで階段を上った。
外に出ると、冷たい風が吹く。
くっしゅん……
と赤子がくしゃみをした。イタチは毛布をかけてあげ、あたたかい身体を引き寄せた。
「……早く帰りましょう、花奏さん。もう寝る時間だ」
本当は……分かっていた。
話し合いなど不可能であり、父親を説得出来るなんて思ってもいない。ただ……微かな望みに賭けていた。
いつかは分かってくれる。
いつかは、二重スパイを気づいてくれるのではないか……。
いつか……。
すべてが終われば、サスケと共に、平和な木ノ葉で、普通の忍として生きたいと……願った。
それは……叶わぬ夢なのか……?
イタチの目に落胆が滲んだ。
花奏を抱きしめる手は震え、イタチは夜空を見上げた。頬を伝う紅い鮮血。そして滴が伝う。
「……ぁう、あー」
喃語を喋り赤子はイタチを見る。偶然にも、頬に伝う涙に、小さな手が触れた。
驚いたのはイタチだ。
「っ! ああ……、花奏さん、すまない……忍は泣くものじゃないな……」
痛々しく笑うイタチは瞬身の術を使い、帰路を急いだ。
術を使う前、抱きしめた花奏が、あたたかく、甘いミルクの香りが広がった。それはイタチの心を優しく慰めた。