第17章 答え
「今夜は、うちは一族精鋭部隊の忍全員が集まる。必ず来なさい。来ないのなら、無理矢理にでも連れて行くつもりだが、それでも良いんだな?」
フガクは主張を譲らない。
厳しい目だ。
父親の目を見て
しばし沈黙が降りる。
赤子の小さく泣く声だけが
客間に響いた。
「…………準備してきます」
フガクとミコトの間を割り、客間を出た。階段を上がり赤子を抱え自室のドアを開ける。勢いよくそのまま扉を閉めた。
「……っ」
鋭い瞳のイタチの視界が歪んだ。頭に血がのぼる。落ち着け落ち着け……目を静かに閉じ、そのまま扉の壁に背中をつけた。
「………っ」
ズルズルと鈍く壁が擦れる音が響かせ、絨毯に尻をつけた。イタチは頭を伏せた。
なんでオレが……なんでオレが!
二重スパイを
しなければならない。
父上の姿は、いつもと違うように思えた。よほどのことが、今夜の会合で話し合われる。
オレは…会合の議事録を提出する義務がある。うちは側ではない。木ノ葉側へだ。
「……クソ……クソ!」
絨毯の床を拳で叩いた。
低音が底に響く。
花奏さんに、万が一……なにか起こればどうする……!
オレは正気でいられない。
「ぁう……」
叩く音に赤子が反応し、小さな背中がビクついた。
ぎゅうっと強く任服を掴み、左右に首が動いた。
「……」
どうすれば良いんだ、オレは……
タイミングが悪過ぎる……。
「……すまない…花奏さん……」
小さな後頭部を引き寄せて、柔らかな髪が頬に当たる。イタチは花奏の細い茶髪にキスをするように、密着して抱いていた。
「……花奏さん……」
声は掠れた。
父上の目に迷いはなかった。
なにかある。
なにかが決まる。
「外に……行こうか……」
イタチの声は悲痛に満ちた。そして小さな声であった。
幸い……今夜の寒さは、和らいでいる。風もあまり吹いてない。
ベビーベッドの布団に赤子を寝転ばせ、イタチは自分のコートを羽織った。
そんなに……
うちはが大事か。
奥歯を噛み締めて
イタチの拳は震えた。