第17章 答え
「あっぶぅぅぅ、あっぶぅぅぅ……」
くちびるをぷるぷる震わせて、可愛い音色を奏でているのは、花奏だ。
「あっぶーー、あっぶぶぶー」と音を鳴らす。ついでにツバが飛ぶ。言葉を喋る前の赤子は、唇を震わせて遊んだりする。これは言葉を話すための練習だ。
「あっ、ぶぅぅぅ……」
まだやる。飽きるまでやる花奏。
目の前に座る影分身のイタチに、「見て見て!すごい?すごい?」と喋っているようだ。
続けさまに披露する花奏は、四つん這いでアシカみたいな体勢をとっていた。小さなあんよをパタパタと動かし、周りを見ている。
ここは、うちは一族が所有する森の中で、よく修行に使われる演習場だ。木陰の隙間から西日が差していた。
「あっぶぅぅぅー……、あ、ぅ」
花奏が、前に座るイタチの膝をペチペチ叩いた。
「ふふ、そんなワザも出来るようになったんですか、早いですね」
イタチの影分身は、柔らかなで少しクセある茶髪を撫でた。目は優しい。ただし隙はない。気配や匂い、いつなんどき、忍は襲われるか分からない。警戒は常に行った。
2人は森の中で、
レジャーシートの上に座る。
「おいで、花奏さん」
影分身のイタチは、朗らかな表情で花奏の脇を抱えて、自分の膝に座らせてあげた。小さな毛布を赤子の胸までかけた。まだ寒い時期。風邪をひいたら大変だ。
「いっしょに修行見ませんか?ほら、サスケが頑張ってる」
影分身と赤子の視線の先は十数メートル離れた場所。本物のイタチは大木の幹の下にいた。
サスケは大木から、3メートル距離を取ったところにいる。地面には足でつけた印の線が付いていた。
手には手裏剣とクナイ。術を使うのは禁止だ。
「サスケ、おしまいか?」
的はイタチ。狙われる当本人は、目隠しをする状態で立つ。さらに後ろで手を回していた。
「サスケどうした? どこを狙っても良いと言ったはずだが……?」
イタチの声は余裕がある。真っ暗な視界。反撃は禁止だ。