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お菓子詰め放題(ジャンル各種)

第3章 独占(龍如/秋山視点)










嫌なことがあった時、彼女はいつも両耳にイヤホンを差し込みこの世界から逃げていく。
普通に名前を呼んだだけで振り返らないのは、きっと大音量で聴いてるからであって、無視をしているわけではない。


表情も変えず、しかしながら何処か現実にそっぽを向いているような彼女の視線の先はいつも決まって窓の外ばかり。




「ちゃん」


とある喫茶店で見かけた彼女。

今日もぼおっと外の景色を眺めながら頬杖をついている。その顔に表情はなく、それこそ無表情という言葉が当てはまるほどだ。

秋山は彼女のこととなるとどうにも足を止めて歩み寄ってしまう。それがどんな感情なのかなんてわからないまま、名前を呼べば、やはり声は届かないのかピクリともしない。

店端のソファーに座る彼女の目の前の椅子に手をかければ、其処でようやく気付いたのか此方に視線を向けてイヤホンを外した。
その瞳はやはり秋山も読めないほどに感情が閉ざされていて、つい苦笑いを浮かべてしまう。


「...秋山さん」

「こんにちは...よりも、こんばんはかな?」

「...もう夕暮れですし、こんばんはですかね」

「そっか、じゃあこんばんは。ちゃん」

「...ふふっ、こんばんは。秋山さん」


言い直したことが可笑しかったのか、彼女は先程の表示は何処へやら、楽しそうに笑みを浮かべる。

その表情がいつもよりも大人びて見えたのは、きっと今日の化粧のせいだろう。
いつもならばファンデーションとアイシャドウと、気軽に出かけるくらいの化粧なのだが、今日は中々出来ないと言っていたアイプチに、目元には猫目のようなアイライナーが引かれていた。








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