第2章 林檎(手下/アップルポイズン)
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アップルティーは好きだけれど、アップルパイは好きではない。
彼と出会ってまだ1週間も経っていない頃、私がそう言ったら困ったように眉をひそめた。
「....、何故だ?」
「....わからない。だけど苦手。」
淹れてもらったアップルティーはとても美味しいのに、焼いてもらったアップルパイは美味しくない。
美味しくないと言ったら語弊があるけれど、私はアップルパイが嫌いなのでそういう表現になってしまう。
「...、トマトもそうだよ。煮込んだりスープにしたら食べられるのに、生じゃ食べれない。」
そういえばだいぶ可愛げのない顔で感想を言っていた気もする。
夕飯を進んで作ってくれるアップルポイズンに対してよくそんなことが言えたものだと今は思うけれど、確かその時はとても眠かったのだ。
私の午後の4時はお昼寝の時間と決まっていて、決まってその時間は眠気が襲ってくる。
そのちょうど眠気がピークの時にアフターヌーンティーをしようと彼に誘われてしまったから断るにも断らなかった。
....どうにも彼の誘いを断ることができないのは今も同じだけれど。
誰かに肩を揺すられて、ふと目をさます。
まだ意識がぼんやりしていて誰が目の前にいるのかよくわからない状態で、また眠気が襲ってきた。
眠気に身を委ねて目を閉じるも、今度は私の名前を呼ばれた。
眠たいのにと思いながらも呼び主を見れば、高身長の男が目に映る。
何度か瞬きをして、その人物をはっきり見ようと目をこすった。
ぼんやり浮かび上がるシルエットから誰なのかを把握する。
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