第1章 理解(手下/マルフィ)
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再度合う瞳に、何故だか寂しさを感じる。
震えそうになる声を飲み込んで、今度は私が深くため息をつく。
「....、聞きたいことは?」
「嗚呼、山ほど。」
「そう。なら聞かないことにするわ。」
掴まれている手を振りほどこうと腕を振るけれど、今度はぎゅっと力強く握りしめてきて流石に痛い。
その痛みに顔をしかめても手を離さないあたり、今日の彼はおかしい。さっきの目つきといい今の行動といい、何が気に障ったのだろう。
戸惑う私に彼は身を乗り出して顔を近づけた。鮮明に移る彼の瞳は今まで見た中で一番黒くて光はないも同然。
「いいや、嫌という程聞いてもらおうか。」
カチャンと揺れるティーカップの音は、やけに耳についてうるさく聞こえた。
彼は、やはり私と居るべきではないのだ。
だってこんな目眩がしそうな状況に、彼はずっと心の中で笑っているのだから。
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(終わり)
粘着質って良いですよね