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第8章 時々おかしい刀剣男士(薬研)








それからと言うものの、彼が無茶をすることはなくなったが、夜になると必ず不安げな表情を浮かべるようになったのだ。

ついに気になって、私は声をかけた。


「ねぇ、薬研。何か心配事でもあるの?」

「え?」

「最近、夜になるといつも不安げな表情を浮かべるでしょ?私が力になれることなら、言って欲しいの。」

「....、ははっ、大将には分かっちまうか。」


薬研はそう言って笑った後、再び顔を曇らせて、実は最近よく眠れないんだ、と告げた。
その理由を問えば、悪夢を何度も見て目が冴えてしまうと、苦しげな表情を浮かべながら口にする。

その表情に、心臓あたりがぎゅうと締め付けられた。
嗚呼、この子は一人でどれだけのことを背負ってきたのだろうかと。

うつむいたまま顔を上げない彼の手をそっと握りしめて、私は優しく笑いかけた。


「...今日は一緒に寝ようか。」

「...え、でも...、」

「私はね、あったかいんだよ。それこそ布団の中にいたら尚更ね。」


私の言葉に、薬研は目を丸くさせた後、嬉しそうに微笑んでくれた。

そうして程なくして、一緒の布団へと入った訳なのだが、どうにも二人はいると狭くて、一人が布団からはみ出してしまいそうになるのだ。

少し頭を悩ませた後、私は彼をぎゅうと抱き寄せた。


「...、大将はあったかいな。」

「薬研も、すごくあったかいよ。」

「...そりゃあ、なによりだ。」

「...おやすみ、薬研。」

「嗚呼、おやすみ。」


彼の悪夢が無くなりますように、そう願いを込めながら薬研の頭を何度も優しく撫でる。

そうこうしているうちに、薬研はすぅと寝息を立てて寝てしまっていた。
私はこの程度しか役に立てないけれど、せめて少しは楽にさせてあげたい。


「...いい夢を。」

軽く頭に唇を当てて、私も眠りにつく。

どうか、薬研がいい夢が見れますように。
そう心で願い続けて。




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