第7章 時々おかしい刀剣男士(髭切)
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「...あれ、主?」
「....、ひ、髭切....?」
寝間着のままの髭切が暗闇から出てきたことにより、正体は判明したものの、こんな時間に一体何をしているのか不思議でならない。
兎にも角にも、髭切であることがわかれば安心だ。
安堵の息をこぼし、彼を見やる。
その手には何かの破片らしきものがあった。
「...もしかして、何か割っちゃった?」
「...、ごめん、これ....、」
珍しくしおらしい態度をとる彼の手の中のものをよく見れば、私が使っている湯飲みのイラストが描かれており、どうやらこれはその破片らしい。
「嗚呼、私のやつか。」
「...暗くて、取り間違えちゃったんだ...。」
私から視線を逸らして俯く髭切の表情は、今までに見たことがないくらい落ち込んでいて、本当に申し訳なさそうにしている。
初めて見る彼の表情に、私は思わずじっと見つめてしまう。
こんな顔も、するんだ。
「...あっ、それよりも、怪我とかしてない?破片がどこかに刺さったり...。」
「いや、それは大丈夫だよ。」
「そう、良かった。...さ、片付けようか。」
ちりとりはどこにあっただろうか、なんて考えていたが、破片は大きく5つほどに割れていたため必要ないだろう。
手で拾ってしまおうか。
手を切らないように一つ一つ丁寧に拾い上げていく最中、背後から小さな声が聞こえてきた。
「...怒らないのかい?」
「え?..、っ、」
振り返った時、拾おうとしていた最後の破片に指を掠めてしまい、人差し指の先に小さな痛みが走った。
少しばかり眉をひそめると、髭切は慌てて此方に駆け寄り、私の切った方の手を優しく包み込み、傷口をじっと見つめる。
その表情は真剣で、思わず胸を打たれる。
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