第7章 時々おかしい刀剣男士(髭切)
ちょこちょこシリーズとしてやっていきます。
トップバッターは髭切です。
注意…少し生々しい表現があるかもしれません。苦手な方はご遠慮ください。
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夜が更けた頃、ようやく仕事が終わった。
目の前に散らばる書類の山を見て、再度よくやったと自分を褒める。
あとは整理をして終わりだ、と思ったものの、よくよく見れば自分の手の内側が墨で汚れていた。
よく書類に付かなかったものだ、と感嘆しながら手を洗うために自室を出る。
もうこんな遅い時間だ。皆はもう眠りについていて、本丸内は静寂に包まれていた、
さて、早く手を洗って私も寝るとしよう。
そう思った矢先、何かが割れる音が聞こえてきた。
その音に、背筋が凍る。
誰かが台所にいるのだろうか。
いやしかし、この時間に居るとは考えにくいような気もするが。
幽霊や妖の類を信じてはいるけれど、まさか本当に居るとは思っていなかった。
ばくばくと鼓動の音が聞こえてくるほどに、心臓は早まっている。
お願いだ、だれかであってくれ。
息を大きく吸い込み、恐る恐る台所を覗き込む。
暗くてよくわからないが、何かが暗闇で蠢いているのはわかった。
その何かを見た途端、身体は硬直し、寒気が走る。
「...ひっ、」
小さく悲鳴をあげたと同時に、その何かが此方を見やった。
どうか幻であって欲しい。
どうか、どうか。
こういったとき不思議と視線を反らせないのは、一体何故なのか。正体を知りたいと思う反面、知りたくないと思ってしまう。
全くもってなんなのか。
その影がゆるりと此方に近づくと同時に、月明かりに照らされ正体が明かされた。
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