第6章 面倒な性格(鬼灯)
ー
振り返れば、わざわざ席を立って私の元に向かってくる。
「あれ、渡し忘れの書類でもありまし...」
たか。
最後の言葉は私の喉に詰まって出なくなった。
書類を抱えていない右手を掬い取られ、じっと瞳の中を覗かれる。
そうして次に、優しく手の甲を撫でられた。
ゴツゴツしていて男らしい手は、暖かくはなく、どちらかといえば冷たい。
妙な感覚に襲われるや否や、鬼灯様は何か紙を私の手のひらに押し付けて握らせる。
「...私の携帯番号です。登録しておいて下さい。」
そうとだけ言って手を離される。
私の手に残った紙は、彼の体温のせいか少し冷たい。
「連絡しますから、その時は出てください。色々聞きたいことがあるので。」
「は、はぁ、わかりました。」
お疲れ様です。
戸惑いながらそう口にした後、私はそそくさとその場を離れる。
背後からやけに視線を感じたけれど、まさか鬼灯様の携帯番号がもらえるとは思っていなかった。
聞きたいこととは果たしてなんなのか。
私には当然わからないけれど、とりあえずわからないまま電話がかかってきたときに、自分が怪しんで出ないのは不味いので、あとで登録しておこう。
「....、怖いな。」
少しの恐怖を抱きつつ、渡された紙をそっと落とさないよう握りしめた。
ー
(終わり)
多分鬼灯様視点か、この後の続きを書くかもしれません。気分次第ですが。