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第6章 面倒な性格(鬼灯)








しかし、差し出した手に触れたのは鬼灯様の手。



私の指先に少し触れたのちに、何の意味だと顔を上げればバッチリと目があった。
どんな感情がこもっているのかもわからない彼の瞳の奥は、揺れ動くことなく私を映している。




「...私が言ってあげましょうか。」




少しの間の後、彼はそう言った。



一瞬何のことだかさっぱりで、唖然とする他なかったのだけれど、先ほどの会話からして多分、私の駄目なところを言ってあげましょうかという意味だろう。


なんだ、そんなことか。


私は彼の指先からするりと手を引っ込めて、少しだけ作った笑みを見せた。


「揶揄い上手ですね、鬼灯様は。」

「....揶揄っていません。」

「そんなこと言って。...嗚呼、書類の不備はなかったですよね?」

「.......、」

「....鬼灯様?」



無理に会話を切ってしまったのが原因か、なんだか不服そうな顔をしている。

揶揄うことができなくて不機嫌になってしまったのだろうか、とは思ったけれど、あの鬼灯様のとこだ。きっと少し残念に思っているに違いない。


「....はぁ、本当に面倒くさい人ですね」

「お墨付きですか?それは嬉しい。」

「違いますよ。どう受け取ったらそんな返事ができるんですか。どうしてくれるんです。」

「そんなこと言われても....、あ、すみません、もう行かないと。」


左手にしていた腕時計をチラッと見ると、すでに10分は経過していて、此処に少し居すぎてしまったようだ。


まだなんとも言えないような表情のままの鬼灯様から書類を受け取り、再度礼を言ってからくるりと背を向ける。


一歩二歩、歩き出したところで後ろから待って下さいと声がかかった。






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