第6章 面倒な性格(鬼灯)
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「さんって、友達いるんですか。」
「...ほ、鬼灯くん?!そういうこと聞いちゃうの君?!」
突然彼の口から放たれたのは、仕事の内容でも何でもなく、ただの問いであった。
しかも結構デリカシーが欠如している内容で、書類を渡しにきただけの私でも流石に真顔になってしまう。
今此処で、しかも閻魔大王様がいる真横で聞くことなのかと思ったけれど、鬼灯様に世間一般の普通とやらは通じない。
「閻魔大王は黙って仕事して下さい。私はさんに聞いてるんです。口を挟むな。」
「えぇ...辛辣すぎない...?」
閻魔大王様を蹴散らして、今か今かと返事を待つ彼の視線から逃れつつ、気を取り直して口を開く。
「....そうですねぇ...。いるんじゃないですか?多分。」
「...曖昧ですね。」
「まあ、相手が私のことを友達と思っているかはわかりませんから。」
実際はいないかも知れないです、と言えば、彼はほぉ、とだけ言って書類に印を押し出す。
納得してるのかしてないのか本当にわかりづらいけれど、きっとわかっていないと思う。
「結構、面倒くさいタイプですね。」
「はは、自分でもよく思います。」
「そうなんですか?」
「自覚はしてますよ。でも意識的にしてしまっていることなので、治せない部分が多いんです。」
耳から垂れた髪の毛を掛け直し、少しだけ大きく息をする。
毎日毎日自分の駄目な部分は更新されていて、今でさえもこの話をせずに笑顔で友達居ますよと言って終わらせればいいものを、こんなに長々と変な話ばかり押し付けてしまっている。
多分、聞く人によっては不愉快なものだろう。
書類に次々と印が押されていくのを眺めながら、淡々と会話をしていく。
表情もない私と鬼灯様ははたから見れば異様なのだろうけれど、鬼灯様に猫を被ったところで意味を成さない事は知っているのだ。
背後から聞こえてくる獄卒達の足音をBGMがわりにしながら、印が押され終わるのを待つ。
何となく、この時間が好きなような気がするのは、何も考えずに済むからだろうか。
最後の書類に印が押されたのをみて、意識を現実に戻す。
ありがとうございます、と礼を言って差し出される書類を受け取ろうとする。
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