第5章 見てほしい/見ています(鬼灯/夢主視点+鬼灯視点)
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じわじわと溢れ出して行く感情を無理矢理しまい込み、彼女を抱えたまま書庫を後にする。後片付けは明日の朝にでもやっておこう。
彼女の安定した呼吸音を聞いているだけなのに心が和らぐ。少し高い体温と、徐々に赤くなる頰を横目に自分の部屋へと足を進めて行く。
多分熱があるのだろう。
よっぽどの無理をしたのだとすぐにわかった。
貴女の、そういうところが可愛らしくてたまらない。
自分を見てくれと言わんばかりに必死に動き回り、周りからの頼みも断ることなく成し遂げようとするその姿勢が、どうにも愛おしい。
大丈夫、私は見ています。
毎日毎日、欠かさず貴女を。
朝昼晩と共に居ることができるならばどれほど幸福だろう。
考えるだけでも幸福感が溢れるのに、今こうして彼女を独り占めできているのは幻覚なのかもしれないと思うくらいに幸せなのだ。
無事誰にも見られる事なく部屋につき、彼女をそっと自分のベッドに寝かせてやる。
結っていた髪が解け、さらりと枕に流れた。それと同時に少しいい香りが鼻を掠める。
貴女という存在が今ここにあることを忘れないよう、優しく頰を撫で、未だ無防備に小さく開かれた口元にそっと口付けを落とす。
「...今日から、よろしくお願いします」
自然と、頰が緩んだ。
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(終わり)
鬼灯様は独占欲の塊というか、とびっきり凄そうですよね。表情には出ずとも、内心嵐の如く吹き荒れていそう。