第5章 見てほしい/見ています(鬼灯/夢主視点+鬼灯視点)
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ふと、バタンと倒れた音が聞こえて来た。
おかしい。
先ほどまではしゃべっていたのに、今はもう聞こえなくなってしまった。
急いで彼女のいるところへと様子を伺いにいくと、そこで倒れていたのだ。
最初のうちは起き上がるだろうかと思い隠れて見たものの、少し経っても動こうとしない。
「....、」
やはり、おかしい。
思わず駆け寄って顔を覗き込めば、眉を寄せたまま苦しそうな表情を浮かべて眠っていた。
意識がないのかもしれないが、これはまたとないチャンスであると思う。
この状況下で何を、と思われるかもしれないが、彼女との接点はもはやないも同然で、無理矢理作るにも自然でなければ意味がない。
つまり、今この状況こそが最高のコンディションであると言える。
「....さん、さん」
念には念を、と声をかけてみるが、ピクリとも動かないため大丈夫だろう。
ひれ伏せたままの彼女をゆっくりと仰向けにしてやり、そのままお姫様抱っこをしてみた。
想像していたのと丁度同じくらいの重さに、此方も何故だか気分が落ち着いてくる。
彼女の彼氏にでもなったような気分に陥り、調子に乗っておでこに軽く唇を押し当ててみた。
すると、潜めていた眉はふっと緩んで、心地よいような表現を浮かべたのだ。
そうしたことにより更に自分の中の何かが燃え上がっていく。
いけない、このままでは更に先のことをしてしまいそうだ。
理性の点においては誰にも負けない自信はあるが、彼女を前にした途端にそれは一気に崩れ去っていってしまった。
彼女の体温や柔らかさ、まじまじとみれる寝顔、少し開いている口。
...嗚呼、いけない気分になってくる。
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