第1章 理解(手下/マルフィ)
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この男の何が悪い、と聞かれたら私は迷わずこう答える。
悪いところは一切ない。
少し自分を見つめすぎだけれど、根は優しくてとても良い人。こんな人とはもう2度と出会えないくらいに素敵。
そう、だからこそ私は彼を見たくはないのだ。
私はいうなら普通。一般人。平凡。
その言葉がお似合いの何処にでもいる女。
辺りを見渡せば私よりも素敵な人なんて何人もいるのにも関わらず、彼は執拗に迫ってくる。
一方彼はどうだろう。
美麗端麗で素敵な人。まるで絵本の中から飛び出したかのようなその容姿は皆を釘付けにする。しかも女性にはさらに優しくて、すぐ助けてしまう優しい人。
....そう、つまりはあわないのだ。
歯車だってきちんとしたもの同士でなければ噛み合わないし、磁石だってSはMとしか合わさらない。
況してや携帯やカメラの充電器だってそれ専用のものでなければ当嵌める事すら出来ない。
そう、これと一緒で綺麗な人は綺麗な人としかくっつくことができない。
例えその人がどんなに性格が悪くても、最初のうちは知らずにあってしまうものなのだ。
もう一口だけ、紅茶を啜る。
嗚呼、不味い。
「じゃあ、私の考えていること言ってあげる。文句も何も受け付けないわ。」
「君の思いが聞けるなら、喜んで。」
「心の準備もいらない?」
「君の事を知れるのだから、必要もないよ。」
「随分な心意気ね。」
「当たり前だ。私は君が好きなのだから。」
そう言ってふわりと微笑む彼は憎んでも憎めない、とても優しい笑みを浮かべた。
元が烏なんて思えないほどに、なんともまぁよく笑顔が映えることでしょうか。
対して私はぶすっとするほか何もなくて、可愛げも何もありはしない。人前ではもう少し良い顔はするけれど、彼の前だと何故だかそれが出来ずに威張ってしまう。
全く情けない話だ。
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