第4章 告白とは(鬼灯/鬼灯様)
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「鼻血も出てますし....、かっこいいのも台無しですね。」
「え、かっこいい?」
「はい。かっこいい顔してるのに、女好きってタチ悪いですよね。私はそういう人あんまり好きじゃありないです。」
一瞬かっこいいという言葉に反応して顔を明るくさせたけれど、私の言葉を聞いてまた直ぐに沈んだ。
「酷いよ...、前はもっと優しかったのに...。」
「猫被ってたんですから、当たり前ですよ。なんならずっと猫かぶりましょうか?」
「それはそれで、なんかやだなぁ...。」
「なら我慢してください。ほら、座って。」
今だに準備中の看板になっているお店の中に入り、カウンターの椅子に座らせる。
カウンター上に置いてあるティッシュを何枚か取って、それを白澤様に向けて差し出す。
彼は謝謝と言って、それを受け取り、鼻やら服やらの血を拭き取っていく。
服も白いせいか、血が目立っているし、そんなんでこびりついた血は取れるわけがないのだが。
そんなところに桃の収穫を終えた桃太郎さんがやってきて、途端に顔を歪めて盛大にため息をついた。
まあ、自分の上司にあたる人がこんなんじゃあ、嫌だろうな。
「朝からまたですか?」
「はい、女の子にビンタされてこの有様ですよ。」
「白澤様も懲りないなあ。」
「煩い!だいたい僕はあの子のこと本気で..、」
「いつも言ってますよ。それ。」
「嘘じゃあない!」
「はいはい。」
ぎゃーぎゃー騒ぎ始める白澤様をなだめて、開店準備を進めていく。
桃太郎さんは桃の品定めを、私は室内の掃除を、白澤様は白衣を着替えにいく。
ここを去っていく後ろ姿はなんともまあ、みっともないというか、なんというか。
桃太郎さんと顔を見合わせて、思わず苦笑い。
「本気で好きになる人数が多すぎますよ。」
「本命ばっかりで、それはそれで疲れないんですかね。」
「たしかに...。」
ううんと考えるけれど、私たちにあの人のことが理解できるわけがない。
何百年と生きている神獣を相手に、私たちの普通や理論というものは通用しないのだ。
....まあ、他人を理解することも、無理なことなのだが。
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