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清廉の君に紅を【刀剣乱舞】

第3章 起首【淀み】


そう言い終われば、大和守様は私の胸ぐらを掴み、右手を硬く握り、大きく振りかぶった。

来るであろう衝撃を想像してきつく目を閉じた。




バチン


大きな音が部屋に響き渡る。

が、その音が発されるために必要な衝撃を、私は受けていなかった。

薄く目を開けば、御自身の右頬に拳がめり込んだ大和守様の顔があった。

驚きに口を金魚のようにパクつかせる私を見て、大和守こう言った

安定「へへっ.....僕もおかしくなっちゃったのかな?
憎いはずの人間が目の前にいるのに、殴れないんだ...」

そう言って大和守様はふにゃりと顔を緩ませた。

安定「あーあ...責任とってよね?
えーっと...う、う...うえ?だっけ?」

『...初です。初めてという字で、“うい”と申します』

急な展開に戸惑いつつも再度自己紹介をする。

安定「そっか...初...か。
僕は大和守安定、元は新撰組、沖田総司の愛刀。
扱いにくいけどいい剣のつもり...まぁ、よろしく」

最後は消え入る様な声で、手をスっと差し出してくる。
それが握手の意だと気づき、慌てて此方も手を差し出し、握手をした。

しかし、中々ては離れず、大和守様の顔を見ると
思い切り手を引かれ、バランスを崩し大和守様の胸元に顔を突っ込んだ。
慌てて離れ、謝罪をしようとするが、背に腕を回され、阻止されてしまう。
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