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清廉の君に紅を【刀剣乱舞】

第3章 起首【淀み】


───そこで目の前が歪み、気づけば先程までの薄暗い部屋で靄に包まれていた。

『...そん...な.....』

今見たものは恐らく大和守安定様の記憶だろう...
だとすれば...自分ならば刀剣男士様のどの立場であったとしても耐えられないだろう。
いくら元はものだといえ、人の身を得た以上。
自分が人の身を与えた以上。
あのようなことは決してあってはならない。

手の甲に温かい温度を感じ、見やると、濡れていた。
涙の主は目の前の...大和守安定様のものであった。

そっと頬に手を伸ばし、涙を拭う。
その手を払おうと大和守様が私の手を掻く。
それでも私は手を離さず、大和守様の瞳を見つめた。
大和守様は手を引きはがすため、私の手を掴み、爪が食い込む。
痛みに一瞬顔を歪ませるが、私はめげずに瞳を見つめ続けた。

『人が、憎いですよね。
憎くないはずありませんよね。
私のことも大いに憎んでください。その憎しみを、怒りを、全て私にぶつけてください。
貴方様は、大和守安定様は、誇り高き新撰組の沖田総司の愛刀であり、神様なのです。
それがこの様ではなりません。
どうか御自身をも苦しめることはなさらないでください。
私が、全て受け止めます。』

交わらない目線を必死に合わせて、言葉を紡いでいく。

安定「おき...た...く.......全ぶ.....うけ..と...め..」

その途端、今までがそよ風に感じられるほど靄は暴風の如く立ち込め...あろう事か大和守様に入り込んでいく。
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