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清廉の君に紅を【刀剣乱舞】

第3章 起首【淀み】


このような状況だというのに...否、このような状況 だから なのか、妙に頭が冴え、私はふとこの御方の名前を思い出していた。

恐らくこの刀剣男士様の名は、大和守安定様...
新撰組の沖田総司の愛刀だった御方だ。

『大和守..様。何も存じ上げませんが、貴方様が審神者を...人間を憎んでいらっしゃることは、分かりました。しかし、だからと言ってその憎悪に飲み込まれ、貴方様が闇と化してしまうのは違います。
どうか、憎むべき相手...人間である私に全てをお向け下さい。』

届いているか表情を確認しようにも靄は色濃く、痛みも増しているため、分からない。
でも、少しでも届いていると信じ、言葉を続ける

『貴方様にお会いしてまだ数刻も経っておりませんが、貴方様は本来、この様な闇とは無縁な程こころお優しい方なのでございましょう?
刃が肩に刺さり気絶していた私に、とどめを刺す事など容易かったろうに、それをせず。ならば見捨てて放っておけばいいものを、私が目覚めるまで共にいてくださり、あまつさえ私が目覚めた時等、心配をして下さっていた様子まで垣間見えました...』

「うるさい、煩い、五月蝿い!!!」

更に続けようとしていた言葉を、大和守様によって阻止される。
それと同時に靄は速度を上げ広がり、部屋全てを飲み込み、私の中にも遠慮なく入り込んでくる。
今まで以上の焼けるような痛みに耐え切れず瞳をきつく閉じ、目の前の大和守様にしがみついた。
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