第3章 起首【淀み】
『あっあの、何分新米なもので、こちらにお邪魔した際に、私は何か皆様のお気を悪くすることをしてしまったのでしょうか....』
尚も刀から手を離そうとしない様子に、慌てて必死に言葉を紡ぎ出す。
『その、えっと...ひたすら彷徨っていたのですが、どなた様にもお会い出来ず。
や...やっとお会いできた...方々...?.....には...その、切りかかられてしまい...その後お会いしたのはもう貴方様だけで...
あの、私はどの様な無礼を働いてしまったのでしょう...』
拳を握りしめ、瞳には涙を浮べて問いかける私の姿を見て、辛うじて刀から手を離してくださった。
?「ホントに何も知らないの?...ははっ.....人間ってほんっとに勝手だよね...ははは.....。」
乾いた笑いを零し自身の髪をぐしゃりと乱すその方を月明かりが照らし出し、初めてその姿をしっかり確認することができた。
髪は申し訳程度に結われているが、荒れており、所々長さが揃っていない、更に衣服はボロボロに敗れておりで服の穴から見える所だけでも相当傷だらけだと言うことが伺えた。
私など足元に及ばないだろう...。何故この方はここまで傷だらけなのだろうか...
そこでふと気がづいた、全身の痛みと怠さが感じられないのだ。
肩は少し痛むものの、もうどこからも血が出ておらず、ふと手を見やると、細かい切り傷たちは跡形もなく消えていたのだ。
?「おいっ!!聞いてるのか!?」
声を張り上げられ、慌てて其方を向けば目力だけで人が殺せそうな程こちらを睨んでいた。