第1章 篇首 【夢】
早くに両親を無くした私は、母方の祖父母に引き取られ、祖父母の神社で共に生活してきた。
私も祖母や母と同様に巫女として育てられ
口寄せ、占い、神楽の舞、祈祷、神託を得る等、一通りの巫女のすべきことは叩き込まれた。
両親はおらずとも、祖父母、友人達、神社の参拝客から沢山の愛を受け不自由なく、寧ろ一路順風な日々を今日まで過ごさせて貰っている。
ただ、少々祖父母の過保護もあり世間知らずな所があるかもしれないが、それも一般の範疇のだと思う。
ここで夢の話に戻るが、
昔、まだ私が言葉をやっと使いこなせるようになってきた頃、泣きながら祖母に夢の話をしたことがあった。
その時は、祖母はただの夢だと抱きしめて安心させてくれた。
それ以降は夢を見ても誰にも話さずに今日まで来た。
そして、眠りにつく前には、出来るだけあの夢を見ぬよう、あの夢が目覚めた時現実に起こってしまっていないよう祈ってそれから床に就くのだった。