第3章 起首【淀み】
一歩足を踏み出す度に増していく不浄の気が、肌を破る様な痛みと共に流れてくる。
こんなにも不浄の気に満ちた場所がこの世にあってもいいのだろうかと思わせるほどその場所は、
黒く淀んでいた。
来る場所を間違えたのだろうか?そう思い何度か引き返そうとした。
付喪神といえど、神の住まう場所がこれ程までに汚れることなどないはずだから。
しかし何度確認しても私が派遣された本丸は確かにこの場にあるはずだし、仲から何かの気配を感じるからには
やはり進むしかなかった。
1番先にめに飛び込んでくる大きく聳え立つ古めかしい門は、もう何年も開かれていないのか、
鍵は錆、蜘蛛の巣が大量に張り巡らされていた。
門の前に立ち、深く息を吸う。
それだけで、むせ返ってしまいそうな程空気は淀んでいる。
私は私を救ってくださった方のため、あの遡行軍によってこれ以上の被害を出さないため、そして神にこの身を一生捧げると誓ったため
この門の先にどんな光景が待っていようともそれを受け入れると覚悟を決め、重く閉ざした門に手を置いた。