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魔界の夜

第2章 出会い


「廊下じゃないの…!?」

そこにあったのは、西洋風の小洒落たバスルームだった。
どうやら部屋の出入口の扉ではなく、部屋に備え付けのバスルームの扉を開いてしまったらしい。
そこには薄いカーテンのかかった窓がひとつあるくらいだった。しかし、迷わずその窓に駆け寄る。

外の様子を見ると、どうやらここは3階のようだった。家というより屋敷とか城とか呼ぶべき建物の周りは、塀を隔てて鬱蒼とした森になっており、空は赤黒かった。
飛び降りることは到底無理だが、窓の外に広めの屋根部分があるのが見える。

「おーい!鍵閉めるなよ~!」

ドアを叩く音と男の声に私は半ばパニック状態で窓の開け方を探る。そして鍵を探り当て解錠した瞬間に、私の手は止まった。

「シュルルルル………」

獣の息遣いに似た音と共に現れた「それ」は、怪物と呼ぶにふさわしかった。

私は即座に開けた鍵をかけ直し、窓から飛ぶように離れた。その間もガーゴイルのような見た目のそいつは私を見つめて離さなかった。そうまるで、獲物を見つめる猛獣の様に…。
しかし不思議なことに、そいつは化け物らしく窓を突き破ってくることもなく、窓の外からこちらを見るだけだった。動く気配がないことを察して、次の逃げ道を探るため後ろを振り返った。

「捕まえた。」

心臓が止まるほど驚いた。振り返ったすぐ後ろに先程の男がおり、さっき通ったドアもいつの間にか開いてしまっていた。そして、間髪入れず私の両手は、またその男に捕らえられた。

「怖かった?あれ。」

男はそう言って窓の方に目をやる。
私は答えないが、表情は恐怖に引きつっているだろう。

「外にはああいう飢えたやつが大勢いるんだ。もちろん君みたいな人間は格好の餌。殺されて食べられちゃう。」

やはりあの目は獲物を見る目だったのか。いつの間にか窓からはあの怪物が消えていたが、改めて思い出してしまい、下を向いてしまう。男はうなだれる私に、話を続ける。

「俺はもちろん君を殺すことはない。人間の女性を連れてくるのって結構大変だからね。逃げ場がないこと、理解できたら、大人しく俺に抱かれてくれない?」

男はうなだれていた私の顎をつかみ、強引に目を合わせる。

「大丈夫。気持ちいいだけ。君は俺に任せればいいだけ…」

そして、男はゆっくりと顔を近づけてきた。

「さぁ、一緒に気持ちよくなろう…」
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