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魔界の夜

第2章 出会い


「んんっ…!?」

しかも息もつかせぬディープキス。頭は一瞬のうちにホールドされて、動かない。
私はとっさに男の両腕をつかみ、力いっぱい押す。しかし男の体はビクともせず、その間にも男の舌は私の口内を犯し続けた。舌を吸われ、歯列をなぞられ、動く度に水音と吐息が漏れる。

こんなに力強くホールドされているのに、重ねている唇は妙に優しい。ボヤけてきた頭を振り払う様に、男の両腕を掴んでいた手を振りかぶるが。

「はっ…んっ!」

唇は離れたもののベッドに押し倒されてしまった。振りかぶっていた手も虚しく、諸手を押さえつけられてしまう。
やっと戻ってきた酸素の感覚に大きく胸を上下しながら息をする。

「気持ちいいならそのまま委ねとけばいいのに。」

押し倒した私の耳元に男は口を近づけてきた。

「そうすれば、そのままイかせてあげる…」

ぞくりと背筋を伝った感覚はきっと恐怖のせいだったと思いたい。
だが、男はその反応を見過ごさなかった。

「ん?耳弱いの?」

男の唇が髪をかきわけ、侵入して、私の耳たぶを捕らえた。

「んっ」

私の弱点を男は弄ぶようになぶる。耳たぶ、穴、くぼみ、舐めてみたり、吸ってみたり…弱い部分を探り当てて、的確についてくる。

「やっん…やめっ……はぁっ…」

自然と体に力がこもり、その力を逃がすために体をくねらせる。
ぞくっぞくっと体の奥から何かが発生して、身体に昇る。切ない感覚が溢れる度に声が漏れた。

男は調子づいたのか、片方の手を離し、私の胸元へと伸ばす。
その時を私は見逃さなかった。

「わっ」

ありったけの力を片手にこめて、男の体にアタックした。よろめいた男の体にさらに追い打ちをかけるようにもう一押し。

私はベッドから飛び出し、手近にあった扉のドアノブに手をかける。勢いのままドアを開けて、体を滑り込ませ、全身でドアを閉める。鍵らしきものがついていたのでそれもひねっておく。

そしてドアを押さえたまま、次の脱出経路を決めようとするが…。
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