第1章 帰
大きい水槽の中を泳いでる魚を見ていると
自然にガラスの前まで足が進む
(自由に泳いで気持ち良さそう……)
目の前にあるガラスをそっと手で触れると
は上を見上げた
こうすると自分も水の中にいるような
そんな感覚になる。
(でも違う。水の音がしない…)
ざわざわとする周りの音が耳に入り
はぁっと息をつく
気分が落ちてきたので
外の空気を吸おうと
近くの自動ドアをくぐった
すると歓声がわぁっと湧いたので
ふと視線を向けるとイルカのショーがやっていた
その隣の水槽でイルカが自由に泳いでいるのが見え
手すりに手と顔を預けずっと見ていると
イルカがこちらを向きキューっと鳴いた
(気持ち良さそうに、自由に泳いでる。 ハルみたい……
あーやって水の中から手を差し伸べて『ほら』って、
その一言で水泳を始めたんだ)