第1章 帰
「せっかく会えたんだしよかったらお茶しようよ!
おっと…その前に着替えなきゃね」
お茶に誘ってくれた目はだんだん
下の方に下がっていくのがわかり
自分の格好を見た
ジャージはかけてもらっているものの
かかっていない面積は水を吸って
身体のラインが分かるように
ピッタリと肌にくっ付いていた
身体は冷えてつめたい筈なのに
体温がぐっと上がり
顔が赤くなっていくのがわかった
借りたジャージで前を隠すように
ファスナー部分を引っ張れば
ジャージが濡れてしまってきていることに気がつき
荷物のところまで走っていった
[うちに来ない?ジャージ濡らしちゃったし洗って返すから]
スマホを取り出し
打っていると貴澄くんはついて来ていたので
後ろをくるっと振り返り
それを見せた
(そういえば、会ってから1度も
ちゃんの声を聞いてない。
もしかして…)
本来ならあまり知られたくなかった
けど貴澄くんならいいと
そう思った
私の隣にいてくれた
唯一の人だったから
けどどういう反応が返ってくるか
わからなかった為
視線は合わせられずに
視界は砂浜をうつしていた
自分にかかっていた影がなくなり
顔を上げると貴澄くんはそこにはいなかった
ガサゴソという音が聞こえた
荷物を見ると貴澄くんが持ってくれているようだが
彼の反応はいまちいよくわからない
「ほら、ちゃん早く行かないと
本当に風邪ひいちゃうよ」
いつも通りの貴澄くんに安心して
家まで案内した