出水と太刀川さんと風間さんに挟まれる話。【ワートリ】
第4章 第4話
「んで、このあとはどーするよ名無しちゃん?」
まだ飲む気かこの人。
「え、帰りますよ」
「ええ〜〜〜〜」
日向は割ときっぱりものを言う性格のようだ。
「私これ以上飲んだらやばそうな気がするんで…」
「えっなにそれ飲ましてあげたくなるな」
太刀川さんが頬杖をついて日向を見上げた。
「ね、名無しちゃんて彼氏いたことある?」
「え、」
これはまた唐突な…。
気にはなるけど。
「うーんと…『彼氏』と呼んだ人ならいます、ね…」
「なにその曖昧な言い方」
何か訳があるのだろうか。
「…そういう関係にはなったんですけど、デートとか…手繋いだりとか、カップルらしいことなにもせずに終わったんで彼氏とカウントしたらいいのか…わからなくて」
…なるほどな。
それは
「カウントしなくていい」
太刀川さんも俺と同意のようだ。
「全くそいつはどういう神経してんだろうなぁ。俺だったらこんなカワイイ子彼女にしてなにもせずにはいられないなぁ」
うっわ…。
「私がなにもさせなかった…っていうのもあると思います」
「…というと?」
勝手に口走っていた。
「そういう、いわゆるカップルらしいことをするのが恥ずかしくて、避けてたっていうのもあったと思うんです。まあ、今でもそういうのはありますけど」
へぇ…
「…もともと、その人がずっと私のことを好きで、じゃあ付き合ってみるかってことになって付き合ったんですけど…私は恋愛感情を持ってなかったみたいです。だから、人と付き合うのは本当に好きになった人と…って決めたんです」
「……それからは?」
「一回もないです。そういう人がいなかったというよりは、男性と付き合うより絵を描いていたいって気持ちの方が強くて。高校はほとんど絵を描いて過ごしてました」
「そっか……」