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出水と太刀川さんと風間さんに挟まれる話。【ワートリ】

第3章 第3話


…と、風間さんの手が日向の襟に引っかかり彼女を止めた。

「…お前に用があるらしいぞ」

風間さんは日向にそう言った後、俺たちをジロリと睨んだ。

バレてましたか…。

「え?」

止められた日向はこちらを向いた。

キョトンとした顔がまた可愛らしかった。

「初めまして。俺はA級1位太刀川隊の隊長、太刀川慶です。どうぞよろしく」

いつもの太刀川さんより3割増しに声が低くなってた。

地味にA級1位を主張しなくていい。

差し出された大きな手に、日向の白くて小さな手が重なった。

「日向名無し、です。よろしくお願いします」

へへ、と首をかしげて笑う日向。

太刀川さんが柄にもなく赤くなってて吐き気がした。

「っ……。あ、で、こっちは俺と同じ隊の出水」

急に話を振られ、え、と詰まった。

「初めまして。日向名無しです」

今度は日向の方から手を差し出してきた。

えっ、なにこれ。

「…出水、公平です。…よろしく」

日向の手は小さくて、少し冷たくて心地よかったのを覚えている。

「やだなぁ風間さん。こんな可愛い子いるなら教えてくださいよ〜」

さっきの照れは何処へ、いつもの太刀川さんに戻っていた。

「なんでわざわざそんなことをしなくちゃならないんだ」

風間さん、すごい機嫌悪そう。

日向に目を向ければ、太刀川さんの大声で「可愛い」と言われて照れているようだった。

口元を手で隠して、小さな身体がさらに縮こまったように見えた。

「こういうことになるから人の少ない平日に頼んでたのに。水の泡ですね隊長ー」

風間さんに菊地原が周りに聞こえるように耳打ちした。

「こういうことって…」

「嫌でも目立つのはわかってたから人の少ない時間にこうして会ってたんだよ。予定が合わなくて、本部でしか会えないからっていうのもあったし。よりによって太刀川隊に目つけられるなんてかわいそうな名無しさん」

なるほど、風間さんは俺たちに日向を合わせたくなかったわけだ。

よく考えればそうか。

だから昨日もあんまり教えてくれなかったんだな。

と、いうことはやっぱり日向は…

「じゃあやっぱり、日向さんて風間さんの『コレ』ですか?」

太刀川さんが小指を立て、デリカシーもなく日向に尋ねた。

あーあー、ほんとバカだなぁ。
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